プロジェクト
「住み続けたくなるまち」の未来予想図をつくる
徳島県K町
多くの地方で高齢化・人口減少が問題化され、数十年後の持続可能性が危ぶまれていますが、数十年先の未来を想像するのも、それを見据えた上で、今から行動するのも、容易ではありません。 この難題を乗り越えるヒントとして今回紹介するのは、あるべき町の将来像を描き、その実現のために今すべきことを決める「バックキャスティング」型のまちづくりの手法です。これまでやってきたことの延長線上に次にやるべきことを考えるのではなく、わくわくするような未来予想図をみんなで描き、その実現のために当事者として取り組む意欲を喚起するのがポイントです。具体的な段取りについて、徳島県K町での業務を事例に紹介します。
町の未来を想像するためのプロセス
町の未来を考える前提には、過去から受け継いできた町の大事な資源があります。将来に残すべきものは何か、将来に向けて現状から変化すべきものは何か。丁寧に精査しながら、将来も住み続けたいまち、選ばれるまちに向けた未来のプロジェクト・アイデアなどを反映して未来予想図を作成しました。
ポイントは、まちづくりの当事者となる町職員を主体としたワークショップ(WS)を重視したことです。つくられた未来ではなく、職員が主体となって町のブランディングテーマと未来予想図を自ら描くこと。そして絵に描いた餅にならないように、未来に向けて今から何に取り組むべきプロジェクトの立案までをゴールとしました。
第1回職員WS まちの将来像について自由な発想でアイディア出し
第1回WSは、全職員参加を前提に2日間(計4回)にわたって開催されました。手法はワールドカフェ方式を採用。テーブルを回りながら少人数で意見を交換するワークショップの手法で、自由な発想を引き出すのに適しています。
WSでは、町の過去から受け継ぐ資源、現状の課題から変化すべき取組を抽出し、30~50年後の未来のアイデアを出し合いました。それらをまちの将来像として6つのテーマに分類し、未来予想図のたたき台を作成しました。
第2回職員WS 第1回のアイディアを深堀、未来のまちづくりのイメージを具体化
第2回WSも全職員の参加を前提に、2日間開催(計4回)。第1回で作成した未来予想図のたたき台をベースに、将来像別のブランドテーマ、ターゲットを話し合いました。町を構成する3つの地域ごとのに未来発展的な取組アイデアを出し合い、各取組の効果や解決できる課題について考えました。
第1回・第2回ワークショップで出た意見をとりまとめ、「挑戦」「健康」「共生」をキーワードに整理し直したグランドデザイン案を作成しました。
【グランドデザイン案(第1回・第2回のまとめ)】
第3回職員WS 未来予想図の実現に向けた取組の検討
第3回WSは、テーマごとに参加者を募って開催しました(計2回)。グランドデザイン案から町の未来予想図を作成し、その実現に向けたプロジェクトを考えました。
まずは第1回、第2回職員WSで出た取組アイデアを短期・中期・長期に整理。プロジェクトの考案から実現に向けたシナリオ作りを行い、職員主体で11の未来創造プロジェクトを立案しました。
未来を「見える化」し、わくわく感を高めることで「当事者化」を促す
第1回職員WSから6つの将来像と3地域の未来予想図のたたき台を作成しましたたが、これだけでは町が将来目指すべきキーワードやまとまりがなく、町が一体となって目指すにはわくわく感が不足していました。
遠い先の未来のために当事者としての行動を促す際には、わくわく感の醸成が不可欠です。特にK町は性格の異なる三つの地域で構成されているため、一体感を生むための工夫が欠かせません
そこで町の未来予想図を文字通りビジュアルに表現しました。実際のまちのスケールでは1つのパースに表現することは難しいため、魚眼パースを用いて一体感のある町の未来予想図を作成 。同時に地域ごとの将来イメージを共有するために、未来創造プロジェクトと連動した地域別パースを作成しました。
遠い将来に待ち構える課題に向き合うのは、ともすると億劫なものですが、あるべき未来の町の姿を明確にしておくことで、自分達の今の取組がどんな未来に向かっていくのか、常に立ち返って考えられるようになります。こうした手法はもちろん、K町だけではなく、他の地域でも有効なはずです。